大蛇に睨まれて縮こまった臆病者のような奇声が聞こえて目をやると、丁度我が秘書が大外刈とやら(柔道の足技の一つだっただろうか)を決めた所だった。仰向けに倒れた敵の胸ぐらを掴み、ガルシアは上体を無理矢理起こさせたのだが、相手は彼が一撃する前に目を回してしまった。ガルシアが“つまらないですね”とばかりに溜め息をついたのを、アタシは見逃さなかった。

 倒れている敵三人を秘書と共同で車へ放り込み、残り二人の方へ目をやる。ウチの妖蝶とカマイタチは大丈夫だろうか。ソニアの腕を折りやがったアイツが視界に入った時、隣で低く澄んだ声がする。



『お嬢様、行きましょう。』



 抑えてはいるが確かな怒りが、その声には表れていた。憤っているのはアタシだけではないのだ。ファミリーの絆は、とても固い。



『ええ。可愛い部下をあんな風にした奴には、制裁を加えないと気が済まないわ。』



 その台詞に、ガルシアがフッと笑う。『あなたらしいですね』という返事を耳に入れながら、アタシは彼と共に二人へ加勢すべく、潮風が吹き付ける波止場を駆けた。

 タイムリミットは、あと20分。ほんの少し時間がかかっているだけで、全て順調だ。