側まで駆け寄ったアタシ達を、ソニアは苦痛に歪んだ顔で見上げてきた。彼女の視線はみんなを彷徨った後、まっすぐアタシへ向けられる。



『ボス……ごめんっ……』



 “怪我をしてごめん”なのか“頼りにならない部下でごめん”なのか、何に対する謝罪なのかは分からない。だが、これだけは分かる。彼女が自分を責めている、ということだ。



『アンタのせいじゃないわ。ソニアはよくやってくれたじゃない。そうよね?』



 残りの部下達へ問えば、彼らは一様に頷いた。ソニアの持ち味である攻めの戦闘スタイルはローサで一目置かれているし、その軽い身のこなしは、幼い頃サーカス団員にならないかと誘われた程らしい。

 彼女はファミリーになる前、訳あってそこを辞めた。何でも、金絡みの罪の疑いをかけられたからだとか。真面目一本で生きてきた彼女だから、勿論心外だと訴えたのだけど、気まずくなってサーカスを去ったのだという。

 ソニアは今、堪らなく悔しい筈だ。“こんな愚か者にやられるなんて”と言いたげな表情が、アタシの瞳に映っている。

 大切な仲間を傷付けられて黙っているアタシではない。静かな怒りを纏い、部下達に目配せをする。彼らは頷き、構えの姿勢を取った。