『よそ見してんじゃねぇぞ姉ちゃん!』

『あら、ごめんなさい。弱そうだから問題ないと思って。』

『何だと!?』



 キレかけた男の背後にワンステップで回り、手刀をお見舞いして手の中の棒を落とさせる。慌てふためく男の首の後ろへ一撃。奴は目を白黒させて、灰色の地面に伸びた。

 女性陣は大丈夫だろうかと辺りを見回せば、彼女達は二人で、数人の男に応戦していた。長い爪を光らせながら果敢に戦う黒豹と、商売道具のハサミを華麗に操る妖蝶。暗闇に舞う二つの姿を見て大丈夫だと思い、視線を逸らした、その時だった。



『ソニア!!』



 響き渡ったパトリシアの声を追えば、先程クスリを吸引していた最もヤバそうな男が、ソニアの片腕を掴んで気味の悪い笑みを浮かべていた。組織のほとんどを気絶させて車に押し込み、あとは彼女達と交戦中の奴らだけになったのだが、どうやらソイツらが厄介だったらしい。



『離せ!!気持ち悪い!!』

『さっきはよくもおちょくってくれたなぁ?生意気な女はこうしてやるよ!』



 ――波止場に痛々しい音と叫び声がこだまし、ソニアの右腕がダラリと垂れ下がる。彼女は冷たい地面にドサリと突っ伏した。