ボソボソと聞こえるスペイン語に耳をそばだてれば、やはり麻薬取引に関することだった。後から黒い小型車でやってきた四人組も交え、こいつは絶品だから高値でよろしくだとか、このレア物も売って欲しいだとか、白い粉が入ったいくつもの袋を前に、奴らは気味の悪い笑みを浮かべている。



『あいつらも中毒者だな、きっと。』

『ええ、特に右端の奴はヤバいわね。目が据わってないもの。』

『あれは禁断症状よ。あのお兄さん相当イカれてるみたいだから、そろそろ仲間がクスリを渡す筈だわ。』



 グレイとソニアの会話を聞いたパトリシアは、冷静にそう語る。彼女の言った通り、仲間の一人が男に吸引道具一式が入っているらしいショルダーバッグを渡す。ソワソワしていた男の目は嬉々と輝き、奴は堪らずその場でバッグを開けた。



『あれは大麻であっちはモルヒネ?あらあらLSDまで……随分と多種多様だこと。』



 アタシには全て同じようにしか見えないのだけど、パトリシアには分かるらしい。粉が落ちる様子や僅かな臭いで判断しているとでもいうのだろうか。

 ゆっくりと、目でゴーサインを出す。それぞれが銃を構え、物陰から一気に飛び出していった。