『……やっぱり、甘すぎるわね。』

『ええ……でも、お嬢様も納得されたのではないですか?先程の話を聞かれて。』



 砂糖を入れすぎたクリームのような声はきっと、自分の身を守るためだ。デビューする前の“嫌われたくない”という気持ちが、そのまま歌声に反映されてしまったのだろう。

 可愛い自分で居るために無意識の思考が働いて、その声が審査員の耳に留まり、デビューに繋がり、そして大衆に受け入れられた。だから彼女は、“糖度の高い歌声”から抜け出せないのだ。一般の乙女ではないアタシにも、それは何となく理解出来た。



『……変わることが出来ると良いんだけど。』

『それは本人次第でしょう。』



 ダークブルーのスーツを着た秘書の言葉を耳に、ふと客席中央に目をやった時。カメラを構える水色のドレスの女から凄まじい殺気を感じ、すぐ様左手に銃を握った。

 ――発砲音と共にステージ中央の歌姫向かって飛んでいく弾丸に狙いを定め、撃ち落とす。群とルイ君が即座にステージへ上がり、アタシとガルシアを除く残りのメンバーも、二人を追ってアンヘラを取り囲む。悔しげに歯噛みする水色ドレスの女に、アタシはゆっくりと近付いて行った。