アタシ達は二人一組になりバラバラに、と言っても、全員がアンヘラの姿を捉えやすい位置にある椅子に腰を下ろした。群とルイ君・ソニアとグレイ、そしてガルシアとアタシ。他14人もそれぞれ組を作った。

 ステージに一番近い場所に居るのは、群達とアタシ達の組。三ファミリーのボスが前方に固まっていた方が良いだろうという判断だった。



『……お嬢様、彼女が歌います。今の所は怪しい動きをする者は居ませんね。』



 ガルシアの声に頷き、今一度、仲間全員の位置を確認する。ぐるりと見回して、最後に群達の方へ目をやった。視線が交わった時。棕櫚の瞳が“ルイは俺に任せろ”と語りかけてきた。

 ――ええ、頼んだわよ。そんな言葉を込めた視線を投げる。僅かに笑んだ口元が、了解の意を示してくれた。



『……ご来場の皆様。本日は私、アンヘラの船上パーティーにお越し下さいまして、誠にありがとうございます。
今宵は皆様に、素敵な歌をお届けします。どうか最後までお付き合い下さいね。』



 その名の如く、優しい笑みを浮かべるアンヘラ。マイク越しに聞こえる声も温かい。彼女がスッと息を吸えば、子守唄のようなひとときが幕を開けた。