大槻可南子は、メガネを掛けた地味な印象のクラスメイトだった。
 地味というより、暗いイメージだった。
 休憩時間でも、誰とも遊ばずに、本ばかり読んでいる。
 大槻可南子が、友だちと遊んでいるところなど見たこともない。

「立てるか?」
 拓海は、まだ倒れ込んでいる可南子に手を差し伸べた。
 が、

「あ、大丈夫……だから……っ」

 言って可南子は、足早に教室へと入っていた。