しばらくすると、数人の客がやってきた。
 そのなかには、さっき受け付けにいたあの女の子の姿もあった。

 それは客ではなく、実は役者として出演していない劇団員なのだ。

 よくあることなのだが、客席があまりに寂しいときは、こうして劇団員が客席を埋める。

 そんなことは、拓海も飯島も知らないのだが。




 ゆっくりと客席の照明が落ちた。