客席には、ごく少ない客しかいなかった。
 全部で30人ぐらいしか入らない客席にも係わらず、客は7人ぐらいしかいない。

「客、ほとんどいないな」
 拓海は客席を見渡してつぶやいた。
「座ろうぜ」
 飯島はそんなことはお構いなしに手近なパイプイスに腰掛けた。

 仕方なく拓海も飯島の隣に腰掛けた。

 拓海はまた不安になってきた。

 本当にこんなところで演劇なんてできるのだろうか?