グイっと乱暴に涙を拭う。それからふっと鞄の中のスマホを確認すると、木崎君からの着信があった。

山口さんと２人で帰るのを見て、心配してくれたのだろうか？
忙しいくせにこんな心配りが出来るからモテるんだ。

ちょっと八つ当たりしながらスマホを見つめていると、突然着信ランプが点いた。



「木崎課長、どうしましたか？」

内心慌てながら、全力で落ち着いた声で電話に出る。

「課長じゃないし、敬語もダメ。」

不機嫌な低い声で答えながら木崎君が続ける。

「江藤、大丈夫？」


何よ何よ何よっ！なのタイミングでそんな優しい声でとかホント、反則だから！
だからほら、また涙出てきちゃうじゃない。


「江藤、泣いてる？今、何処？すぐ行くから！そこで待ってろ！」