凩が吹く季節になり、少し哀愁の漂う様な風景が顔を出し始めた頃、『黒猫』の開店前、香音は一人である物を眺めていた。 そこにあったのは小さな長方形の中に沢山写し出されたかつての三人組、水谷家。 三人とも心から笑っていて、あの頃がいかに幸せだったのかがそれからも分かる。 今となっては笑う事も少なくなった_ 「……陽、もう無理なのかな。」