「そいつは悪かったな。」


素っ気無く返事をして男はようやく振り向き様に腰掛けていた席から離れ、香音達の元へと向き合った。


「…なんで…」


「たまたまだ。
丁度この前、久々に御前の上司に会って色々話を聞いたんだ、そしたらこの店に居ると…」


瑠華の問いに答えるかの如くその男は淡々と話を進める、能天気な上司に想像がつく瑠華は苛立ちを覚える。


「…『遠山(とおやま)』さんと知り合いだったっけ？
『水谷(みずたに)』さんて。」

「言ってなかったか？
遠山は俺の学生時代の時の後輩だ。

それより…」

そう言って『水谷』と呼ばれたその男は改めて香音の方へと視線を向けた。


「どうして何も言わずに俺の元から消えたんだ。かお…」

「ここでは『香音』で通ってる。
本名で呼ぶのだけは止めて。」

突然言葉を遮られ言葉を失った水谷だったが、少し考え再び会話を続けた。