「…まぁ、色々あったからね。」

苦笑いして纏った紫煙でその場を誤魔化した。


「今の妖艶な『香音』先輩も妙な色気があって好きですけど…」


一瞬凪の目が何かを捉えたかの様に真剣になる。



「昔の『馨』先輩の方が自分に素直な感じがして、私はそっちの方が好きですね。」



「…………」





他人の事言えないじゃん、私…




昔の様に馬鹿みたくなれたらどんなに楽か…
香音はいつの日からか本当の自分を何重にも偽ってきた事に心を痛める。



「あ、でも先輩が今のままで良いんなら良いんです!只…」



出勤時間前なのか凪は派手なバッグから財布を取り出し勘定を払う。