「そんな格好してたって端から見れば『女』同然。
それが『男』だって周りに知られたら尚更さっきみたいな輩に目を付けられるのも当然なんじゃない?」

「馨…御前なぁ、何もそこまで…」

「でも」


と馨は続ける。



「『男』だからって道理に基づいて無理に強がる必要なんて何処にも無い。

見た目が『女』で身体が『男』でも自分が『女』として生きているなら周りがどう言おうと関係無い。

アンタ、自分の事半端者だって言うけど半端な気持ちじゃこの立場は中々やっていけないと思う。


辛い事があったら思いっきり泣きゃあ良いじゃん、『女』の子なんだからさ。」




そう言って『女子生徒』にニカッと笑ってみせる。





『オカマ』としてではなく初めて『女』として扱われ目の前の『少女』は一気に胸が熱くなるのを感じた。






いつの間にかその熱いモノは瞼を通り越し、幾つもの雫となって頬を滑り落ちていく。




「…ふっ…うぅっ……」




薄暗い景色の中、遠くで夕日が沈む合図を送るかの様にその雫は小さな光となって消えていった。