「………なにこれ」
「見たら分かるだろ」
「いやいや…これがマフラーなのは分かってるわよ」
「大事に使えよ?」
「これってさ…手作りだよね?」
「見たら分かんだろ。
毛糸からちゃんとお前のことを考えて選んで、作ったんだから大切にしろよ」
「…ふふ」
「あ?何笑ってんだよ」
「手作りって…それもクリスマスプレゼントに…その役目絶対私だからね」
「おい、体震わせてまで笑うことないだろ。
別に彼女が作る役目とか決まってないだろ。
それより大切にしろよ、ばー和子っ」
作ることには恥ずかしがることなく、嬉しがっている私を見て照れ隠しで暴言を吐く貴方が愛しかった。
……………
「ママっ、何そのマフラー。朱色?珍しい色だね。
可愛いっ!頂戴」
「あー…ごめん、これは無理」
「えー、ケチ」
「大切なの。何年経っても…」
器用な貴方が編んだマフラーは何年経ってもほつれる事なく毎年役目を果たす。
それはあの頃の思い出と同じく色褪せない朱色のままで。
【朱色】.....from『煙草味のキス。』