彼女は知らない。


「最近のロボットって本当に人間みたいな外見で、口にする物も人間と同じ物らしいよ」


「そうなんだ」


目を伏せて返事をする彼女に気づかない振りをして話を続ける。


「科学の進歩ってすごいものだなぁ」


「…そうだね」


返事をする彼女の反応を見てみるとまだ彼女は気づいてないようだ。

その事に少しの罪悪感と、ホッとする安心感が満たしていく。


「もしも……」


彼女が顔を上げ、口を開いた。



「なに?」


「もしも…その人間に近いロボットと恋に落ちたらどう思う?」


きっと精一杯の勇気を出して言ったんだね。

頑張ったね。


ずっと君は僕に伝えたかったもんね。

自分がロボットだということを。


内心ほくそ笑む。

けれど、表情は無表情で彼女の問いに答えることなく、彼女に問いかけた。


「……君はどう思う?

ロボットと恋したら」


「私は………ロボットでも諦められない。

だって大好きだから」


真剣な目をして答えた彼女に何度目になるだろう恋に落ちた。

やはり彼女は素敵だ。


「そっか…」


素敵で純粋。


「ずっと一緒にいようね」


「…うん、そうだね」


泣きそうに返事をする彼女の頬を撫でた。

あ、彼女の体温表示が上がった。
可愛いな…。


自分のことをロボットだと“思っている”彼女は知らない。

本当は僕がロボットで彼女は人間なのに出会った当初、彼女に一目惚れしたロボットの僕が彼女に催眠術をかけて

彼女がロボットで僕が人間だと洗脳したことを。


彼女はきっとその事実を死ぬまで知らないだろう。

だって僕が君を手放すことは一生ないからだ。


【彼女が知らない真実】