「なぁ、悪いんだけどさシャー芯1本貸してくんね?」


「貸すって返してくれるの?シャー芯を?」


「確かに。じゃあ、くれ」


「いきなり命令形かい」


「いいからよこせ」


「言葉荒いなぁ…本当。

はい、どうぞ」


「ん、どうも」


「ねぇ、あげた代わりにさ、私にもちょうだい」


「なにを?」


「明日のお昼ご飯」


「あ?明日?学校ねぇだろ。土曜日だぞ」


「うん、だから明日」


「……どういう意味?」


「ふふ、顔赤いよ?

分かってるでしょ?」


「うるせぇ」


「明日、私とデートしてくれない?

その時、お昼奢ってよ」


「…シャー芯1本高ぇな」


「でもシャー芯1本と私のとびきりな笑顔が貰えるんだよ?

お昼ご飯代なんて安い物だよ」


「……それならそうか」


「お、珍しい。素直だ」


「うっせ!ばーか」


「ふふ、じゃあ明日ね。

どこ行くか考えててね」


「…次の授業中机の下で探しといてやるよ」


「スマホ没収されないようにね、あと」


「なんだよ」


「シャー芯1本、意味なくなるよ」


「…そんなの話しかけるきっかけにしただけなんだから関係ねぇよ」


「なーんだ、じゃあいっか。

ハハ、顔赤いよ」


「だからうるせぇんだよ」


「明日、楽しみにしてるね」


「….ん」


シャー芯1本と君の笑顔。


その代金は明日のお楽しみ。



【シャー芯】