たくさんの記憶の中から、引っ張り出した過去の記憶。時という霧が掠めて、曖昧だけど、たった一文字だけ。たった1文字の、1部分だけ、明るくみえる。多分これは、“北”なはず……!

「北?じゃあ、これか?北風丘駅ってとこ。ここだけ、北ある」

「そうかも?間違ってたら――」

「よし、行こうぜ!」

間違ってたら、ごめん。そう言い終える前に、誓は強く言った。誓の顔を見ると、その瞳は“北風丘”を見ているのではなく、“夕日”をみているような、そんな気がした。

「うん、行こう」

北風丘で絶対あってるなんて、保証はしない。間違ってるかもしれない。でも、誓と2人なら、2人でみる景色なら、なんだって綺麗にみえると思うから。突き進もう。どこまでも、どこまでも。