「俺に勝ちたきゃ、膝をついて懇願しなよ」
まずなんの勝負か分からないし、彼の勝ち誇った顔はーー
私にとって、かなり屈辱的なものだった。
私が何したって言うの。私はただ真面目に謙虚に生きてきただけで、顔がいいからって奔放に生きてるこいつに懇願する筋合いがない。
「………や、」
「ん?」
「そんなの絶対いやよ!」
咄嗟にそう出てきた言葉。
目を大きくして驚いたり表情を見せた橋本君に、私は少し落ち着きを取り戻したけれど。
「ふうん?」
いつもよりワントーン低い、その相槌の声。
まるで獲物を定めたかのような光を帯びた瞳。
いたずらに上がった口角。
それらを感じた瞬間、
私はひどく自分の言葉に後悔した。