入学してから数ヶ月、橋本くんについて分かったことはとんでもない問題児だということ。
学校には来ないし、来ても騒がしいし、廊下では女子の塊を作り上げるから邪魔。
真面目人生を送って来た私にとって、彼は人間ではないと断定された。
あんな人に関わったらろくなことがない。
これからの人生に大きく関わる内申点に響くに決まっている。
普通にしていたら、あんな学校内のスーパースターと関わることなんてそうそうないだろう。
正しく、真面目に、慎ましやかに。私は絵に描いたような模範生として高校生活を終えようとしていたのに。
ーーーー「相沢 乙葉ちゃん?」
高校1年、初夏。
珍しく朝から学校に来た、学校のアイドルは私の前に立って、そう私の名前を呼んだ。
彼はアーモンド型の目の中にある、ポメラニアンのように丸くて大きくて潤んだ瞳でじいと私を見つめる。
そして私の机に、ダンッとプリントを置いた。
「これ、昨日言ってた古典のプリント」
「あ、え?」
「昨日相沢さん怒ってきたじゃん。俺がいないからグループワークが進まないって。あれのやつ、もう纏めてきたから」