かつん、と机に落ちるシャーペン。私は無意識に立ち上がって、教室を出ようとする。が、あいつは廊下にいるからそれでは見つかってしまうと足を止める。
どうしよう、逃げなければ。"あいつ"が来る前に、逃げなければ。
「どこかどこか…!」
私は教室をきょろきょろと見渡す。しかし見つかるのは教卓の下ぐらい。あんなところに隠れるなんて馬鹿すぎるし、しかも前回それで捕まっているし。
だけど黄色い声はどんどん近づいて来る。
「りっくんどこ行くの~~?」
「そっち教室しかないよ?」
本当、教室しかないし。私は女子たちの声に怯えながらただ教室の端っこに佇む。
しゃがんで縮こまっとけば、もしかしたらこちらが見えなくて気づかれないかもしれない…!!
なんて馬鹿な考えを思いついた私は、その場でしゃがみこんで頭を両手で抑える。
なんでこの私が怯えないといけないのだ。たった1人の男相手に。
くそ、なんで―――――「いーんちょー!!」