甘さと苦さが満腹です
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(Sweetness and bitterness are full)
「りっくん、これあげる!いちごのチョコレート!」
「うっそお、いいの?俺いちご好きなんだよね~」
「りっくんこれあげる!!」
「りっくん私も!」
「私も!」
「…あの男は動物園の餌やりコーナーの動物か?」
「目を疑うよね」
珍しく朝から学校に来たと思えば、橋本くんは女子たちから猛烈アピールを受けていた。“りっくん”とは彼のあだ名である。見た目に似合っていていいと思うけど、私は絶対そんな呼び方しない。
長袖のシャツを腕まくりして、ズボンの腰あたりは少し低め。身長は普通の男子と同じぐらいだけど、体つきがいいのか制服を誰よりも着こなせている。
ちなみに私は学生手帳に書いているそのままの着方である。目の前に座る明日実はギャルだから、胸元をはだけさせて目のやり場に困る着方をしている。
「でもさ、やっぱり橋本って異常なイケメンじゃね?」
「うーん」
「あんな上級顔面中々いねーぞ?相沢、あいつ狙えばいいじゃん」
「はっ!?ば、馬鹿じゃないの!?」
「…うぶだな…」
うるさいな、目を丸くしている明日美から瞬時に視線を逸らす。