私が落ち着いたときには、時間は7時になろうとしていた。


「美羽…時間、大丈夫?」


「うん…今日は家誰もいないし…」


「おじさんもおばさんも出張?」


「そう…祐希は大丈夫なの?」


「俺はいつも8時くらいまで粘ってるし、全然大丈夫だよ」


「よかった…ごめんね」


「全然いいよ。それより…なんであんなに泣いてたか、聞いていい?」


「…藍原が」


「あいつが?何かされたのか?!」


慌てて聞いてくる祐希に、今まで起こったことをどう説明するか考えていると、


「俺はなんの危害も加えていないよ。危害は、ね」


そんな冷たい声が聞こえた。

入り口には、藍原が立っていた。


「やあ、水野さん」


にっこり微笑む彼は、恐ろしいほど冷たい目をしていた。


「…また、何か用?」


「君には用はないよ。俺が用事があるのは…お前だよ」


藍原はそう言って、祐希に手の平を向けて–––。


「嫌!やめて!」


慌てて祐希の前に立ちふさがる。


「美羽?!退け、危ないだろ!」


「嫌!ねぇ、やめて!祐希に何をするの?!」


藍原はあからさまにイラついた顔で私を見た。


「大姫…邪魔だよ?」


「邪魔してるの。祐希を覚醒させたいのか知らないけど…やめて」


「分かってるじゃないか」


「待てよ、なんの話だ」


話の渦中にある祐希が私に問いかけてきた。