私たちは再び屋上に行った。

祐希は保健室からここにくるまで珍しくなにも喋らなかった。


「…どうしたの?」


難しい顔をして黙っている祐希に声をかけてみた。

すると祐希は、やっと顔を上げた。


「あのさ…俺、思い出した」


「え…なにを?」


「前世。自分のこと、美羽のこと、あいつのこと」


「あいつって…藤内光澄?」


「そう。俺、あいつに殺されたんだな」


静かに、冷静にそう言う祐希は–––確かに全てを思い出しているようだった。

義高だったころのことを思い出したのなら–––あの人に伝えろと言われたことを伝えなくてはいけない。伝えないと、警戒させることはできないから…


「祐希…あの人が…『もう一度殺してやる』って…」


「藤内が…そういったのか?」


「うん…気をつけて、絶対死なないで」


「当たり前だ。とりあえず、あいつのこと調べないといけないな。あいつの知り合い知ってる?もしくはクラス」


「分からな…あ、私のクラスの担任の和泉先生。事故にあった日の放課後、あの人と話してた」


「和泉先生か。じゃあ、今から聞きに行くぞ」


「わかった…けど、祐希は大丈夫なの?」


「何が?」


「体調」


「ああ、もう万全。美羽は元気?」


「うん」


「じゃ、行くぞ」


祐希はそう言って、私の手を引いて屋上を出た。