これが隆文とあたしの最初の出会い。

ドラマチックなエピソードもびっくりするようなハプニングも、何もなかった。
出会いなんて案外こんなものなのかもね。

バイトに通い初めて三週間。
あたしと永井さんはよく会話をするようになっていた。
フロントマンとレストランのウェイトレスは部所が違うからそんなに長く一緒にいたわけではないけれど、永井さんは誰にでも人懐っこく話しかけるから入ったばかりのあたしも自然と打ち解けることができたんだと思う。

同じ部所でのあたしの呼び名が『坂井さん』から『美里ちゃん』に変わった、八月。

フロントさんは相変わらずあたしのことを『坂井さん』と呼んだが、永井さんはいつの間にか私のことを『美里ちゃん』と呼ぶようになっていた。

すごく自然な流れだったからしばらく呼び方が変わったことに気付かなかったくらいだ。

その頃くらいからかな?
永井さんから相談を受けるようになったのは。