緊張しっぱなしだった初めてのバイト経験が終わり、先輩に連れられてフロントバックのドアを開ける。
更衣室とタイムカードがこの中にあるからだ。

「お疲れ様でーす」

先輩がドアノブを握ったまま自然な流れで挨拶した。
バイト経験0(ゼロ)の私にとっては何もかもが新鮮で、先輩のマネをして慌てて、オツカレサマデス、と頭を下げた。

粗相のないようにしなきゃと思った。

「お疲れ様でーす」

フロントバックにいた数人が挨拶を返す中、一番人懐っこそうに笑っていたのが彼、永井隆文だった。

背は175センチ以上はあるだろう。
でも、太っているせいでそんなに高くは見えない。

後から聞いた話しだが当時は体重が125キロもあったそうだ。

眼鏡をかけていて、角刈り。
若く見えなくもないけど四十くらいに見えなくもない、年齢不詳の男性。

第一印象はそんな感じ。

間違っても恋愛対象にはならないタイプだった。