県外の大学に入学が決まり、一人暮らしを始めた大学一年生の春、親に迷惑をかけたくなかったからあたしはできるだけ早くアルバイトを始めようと考えていた。

高校ではバイトは禁止されていたから、バイト先を探すこと自体初めての経験。
以前ドラマで主役が求人情報誌や携帯サイトを見てアルバイトを探していたのを思い出して、あたしも見よう見真似でそうした。

五月中旬。
学生課で見つけたアルバイト募集の紙を見て、即電話。
マンションからも学校からも近いことと、ビジネスホテルのレストランという、ちょっと他とは違う職場に目を引かれたからだ。
時給はあまりよくない。

すぐに面接の日程も決まり、面接の日、当日もあたしの緊張をよそに話しはトントン拍子に進んだ。

ソファーに腰掛けるなり、
「で?いつから来れます?」
と言われたくらいだ。

なんだか拍子抜けした……。
バイトの面接って大学入試の面接や何かのオーディションのようなものを想像してたから。

仕事なんて、案外簡単に見つかるものなのかな、と思った。


――あの時、もし、求人情報誌でアルバイトを決めていたら。

もし、学生課で他の求人に目を留めていたら。

もし、不採用になっていたら?

もし――。

あげればキリがないほどの偶然が重なり、あたしと隆文は出会った。