あたしはガックリとうなだれた。

「彼女ね、ブルガリアにいるんだ」

「へ!?」

“ブルガリア”という言葉に、あたしはかなり驚く。

「そりゃあ、気づかないわけですよね……」

 笑いたくもないのに、あたしの顔は苦笑いをした。

「ごめんなさい」と「ありがとうございます」を繰り返して、あたしは車から降りる。

 前回は、車が見えなくなるまでその場にいたが、今回は逃げるように自分の部屋へ帰った。

 普通いるよね、恋人くらい――

 なんで気づかなかったんだろうと、あたしは頭を抱える。

 てっきりあたしは、彼女になれるものだと思っていた。

 海の向こうに、すでに付き合っている彼女がいるなんて思いもよらなかった。

 期待が高まる言動があっただけに、あたしはひどく落ち込んで、枕を濡らすのだった。

 あたしのシンデレラストーリーは、こうして幕を閉じたわけで、あたしは「シンデレラ」でもなんでもなく、長い夢を見せられているような、そんな気分だった。

 そして、大好きな“ヨーグルト”を、しばらくの間食べられなくなったのは、ここだけの秘密である。