どうにかして、曖昧な今の関係を打開したい。
そう考えていた矢先に訪れたピッタリのイベント。
それがバレンタイン。
「そっかあ……今度こそ、上手くいくように七海、応援してるからね! 一緒に恋バナとかしたいし!」
「うん! て、あれ? 恋バナ? 七海、好きな人いたっけ?」
私の何気ない質問に、七海は途端に顔を真っ赤にしてその場に立ち尽くす。
「おーい、七海ー?」
「な、内緒だからね!?」
弾けるように間合いを詰めてきた七海に一瞬驚いた。
けれど状況が分かってくると案外楽しくなってきて、私は普段の仕返しも兼ねて彼女に反撃を開始した。
「ちょっとー、いつの間に? 私のこと色々詮索してきたくせに自分のことは話さないとかナシだからねー? で、相手は誰」
事情聴取する刑事ばりに強気で迫ると、七海は苦しそうな表情で私から視線を逸らして言った。
「い、今はちょっと……言えない」
けれど七海は、相手の名前を私に教えてはくれなかった。
「なんで?」
「今は言えないけど……伝えられるようになったら、ちゃんと言うから」
私は首をひねる。
「何? 禁断系? 先生とか?」
「そういうんじゃないけど……」
「ふーん」
なんだか空気が重くなっていく気配を感じたので、私はそれ以上の詮索を止め、彼女の好きな人の名前を知らない上で話を進めることにした。
「で? 七海はその人にチョコレート渡す予定なの?」
「……一応」
初めて恋を知った少女のようにはにかんだ七海の頬を、私は椅子から立ち上がり、思わず両手でつまんだ。