「ビビり過ぎー、ウケるんですけど。で? 橘は何してたの? たそがれ中?」
明るい声色でそう問いかけた私に、橘はどこか戸惑った表情を覗かせながら答えた。
「……まあ、たそがれ中、です」
感傷的に笑う彼に、私は思いつく事柄をぶつける。
「もしかして琥珀関係?」
私の言葉に、橘の肩が跳ねた。
やっぱり。
「琥珀は気が付いてないけど、結構噂になってるもんねー。希望の元彼が幼なじみと両想いらしいってさ」
私は続ける。
「橘は琥珀が好きだったんだもんねぇ……あ、過去形じゃなくて現在進行形か。告白の返事待ちの立場としては、勝負ありって感じだもんねぇ」
なるべく明るい声色で話してみるが、話題が話題なだけに、慎重さが求められる。
私が知っているのは、橘が琥珀に告白して未だ返事を貰えていないらしい……という断片的な情報だけ。
「返事は僕が琥珀さんに告白したその時に貰いましたよ。直接言われたわけではありませんけど……あれは完全にフラれたようなものですし」
「え、そうなの?」
どうやら私の得た情報は間違っていたらしい。
まあ、あくまで高校生同士の噂だし、信憑性を持ち出す方がお門違いではある。