「ていうか、え? 悠ちゃんのお母さんと?」
私はお母さんの言った言葉が引っかかり、相手を聞き直す。
「そうよ。最近会ってなかったからねえ……たまにはお話ししない? ってことになって」
これは、チャンスなのでは?
「あ、あのさ、お母さん」
「なに?」
お母さんの言葉を遮って、私は遠慮がちに、けれどハッキリ自分の意思を主張する。
「やっぱり、私も行っていい?」
「え? いいけど……でもあんた、用事があるって……」
お母さんに嘘をつき続ける後ろめたさに私の心が耐え切れなかった。
心苦しくなった、というのがその発言に至った一つの要因。
それから。
「実はそんなに急ぐ用事でもないんだ。なんだったら来週でも再来週でもいい用事。漫画の新刊を買いに行こうと思ってただけだから。私も一緒に行っていい? 悠ママに、こないだお土産貰ったお礼も言ってないし」
私は微かな期待を抱いていた。
もしかしたら、学校以外で悠ちゃんに会える機会なのでは? といった感じに。
突如手の平を返したとはいえ、よくもまあ、つらつらともっともらしい理由をひねり出せたものだと思う。
お母さんは私の発言に一瞬だけ困った様子で首をひねったが、すぐに笑顔で言った。
「そうね、晴香ちゃんには私からメールしておくわ。丁度いいから夕食も一緒に済ませちゃいましょうか。駅前に新しく出来たデパート、あそこに行ってみようかって話になってね。ここからだとバスで三十分くらいかしらね。そんなわけであと一時間くらいしたら出掛けるから、それまでに準備してね」
「はーい」
元気に手をあげながら返事をしたところで、お母さんの携帯電話が鳴る。