皿に積み上げられた唐揚げもずいぶんと減った頃、お母さんが奥の部屋から何かを抱えて出てきた。

テーブルに下ろされたのは表紙の剥げた古いアルバム。


「押入れから見つけたの!!桃と洲くんが写ってるわよ」


…全く、余計なことをする母親だ。

あたしが冷たい視線を送っているのにも気づかず、お母さんは意気揚揚とアルバムの表紙を開いた。

そこにあったのは、大きな花かざりを頭につけられフリフリのワンピースを着せられたあたしの姿と、蝶ネクタイを首につけた洲の写真。

小さな赤い蝶ネクタイで締め付けられた洲の首は、少し窮屈そうだった。


「これ多分、最初のコンクールの時の写真よ」


かすかに覚えてる。初めて行った大ホールの天井はずいぶんと高くて、あたしを圧倒した。

あたしの順番は洲よりもずっと早くに来た。

いつもはライバル視した言葉ばかりを吐きつけてきた洲だったが、この時ばかりは緊張でガチガチのあたしに笑顔で「がんばれ」と言ってくれたのだ。


「懐かしいなぁ…」


写真はきっと、コンクールが終わった後のものだ。二人とも緊張している様子はない。

何も知らない幼いあたしたちは、四角い写真の中で幸せそうに笑っていた。



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