「…へ?」
上目遣いにあたしを見る美登里に、思わず怪訝な表情を向ける。
言われた言葉が脳内に到達するまで、少し時間がかかった。
「な…なんであたしが洲とっ!?」
「だから付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってないっ!!」
千切れんばかりに首を振ると、美登里は気が抜けたようになあんだ、とソファに体を沈めた。面白くないと口を尖らされても、こっちが困る。
ただ洲の名前を聞くだけで頭の奥がじんわりと熱くなるのは、自分でもどうしてかわからなかった。
「…ていうか、いきなりどうしたの?美登里」
「え?」
「美登里こそ彼氏いるって言ってたじゃん。うまくいってるの?」
「あ〜…ね。倦怠期真っただ中ってかんじ」
サラリと、耳にかけていた髪の束が落ちる。それは広がって、色づいた彼女の頬を隠した。
「付き合い初めって一番楽しいよね。一緒にマック行ったり、映画いったり、いろんなこと話したり…そういう初々しいの、もうないなぁ。いいなぁ、桃は!」
「だから付き合ってないってばっ!!」
必死につっかかるあたしをなだめるように、美登里はとあたしの頭をぐしゃぐしゃに撫でる。
…これじゃいつもと立場が逆転だ。
ケラケラと笑うぽってりとした唇は、ツヤツヤとピンクのグロスで輝いていた。
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