美登里たちの目がまん丸く見開かれる。きっとあたしの目も、こぼれんばかりだった。

天と地がひっくり返ったかと思った。


だってまさか、


赤星さんがあたしをかばってくれるなんて。


「だって結城さん、演劇部なわけじゃないし…自分の役もある上に演出まで、すごい大変だと思うの!あたしなんて、セリフすらうまく言えないのに…」

赤星さんはギュっと台本を握ると、赤くなって俯く。


「みんなにすごく迷惑かけて…でも結城さん、見放さずにあたしにもいつも指示だしてくれたわ」


みんなに注目されて我を取り戻したのか、彼女の声はどんどんと尻すぼみになっていった。

「それに…結城さんの台本、隙間ないくらいびっしり書き込みがしてあったから…」

「もういいよ」

静まり返った教室に、あたしの声がやけに響く。少し声が震えていたのに、誰も気づかなければいいと思った。

胸の奥が熱くなった。

ずっと不安だったのだ。何もわからないなかで、あっているかどうかもわからずに、でも誰にも頼れなくて。

自分を見ていてくれた人がいるなんて、思わなかったから。


「もういいよ赤星さん…ありがとう」




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