「やだ桃ちゃん、怒ってばっかり〜」
「そうだよぉ、楽しくやんないと意味ないじゃん!」
キャアキャアと楽しそうな声を上げ、投げ上げた花びらを拾い集める美登里たち。
教室の隅に台本を抱えたまま、困ったような表情を浮かべる赤星さんが見て取れる。
今日は一段と、人数が少なかった。
「〜っ、いい加減にしてよ!!」
シン…と教室が静まり返った。
切れた糸は押しとどめていたもの全てを、濁流のように前に押し出す。
もう…止まらなかった。
「こんなんじゃいつまでたっても完成しないじゃない…っ!!なんでみんなもっと真剣にやってくんないの…っ!?」
自分が馬鹿みたいだ。
一人で悩んで、一人だけで劇を作ってるみたい。
みんなでいいものを作りたいって思ってるのは、あたしだけ?
「そ…そんな熱くなんなくたっていーじゃん」
花びらを拾う手を止めた美登里の口元は、明らかに強ばっていた。
教室内の空気が、触れたら爆発しそうなほどにピリピリとし始める。
「花びらだってさぁ、一年生がやることなくてかわいそうだと思ったから頼んだんだよ?役ないし」
「…だいたい桃がちゃんと指示してくんないから悪いんじゃん?演出ってそーゆーもんでしょ?」
いつもの冗談っぽい笑顔は奈々美たちからも消えていて、あたしの心に黒い影を落とした。
「桃さぁ、文句ばっかり言ってるけどその前に自分も努力したら──」
「違うと思う!!」
発砲されたように鋭く飛んだ声。
驚いて、弾けるように顔を上げる。
赤星さんが、教室の真ん中に進み出ていた。
「あたし、結城さんはすごく頑張ってると思う!」
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