色付けされたピンクやら赤やらが目に痛い。
描かれたドレスをまとうスケッチブックの中の女の子は、ずいぶんとキラキラした目をしていた。
「え〜っ!ちょーかわい〜っ!!」
「でしょでしょっ?フリルとかレースとか、こんな感じでつけるとよくない?」
「よいよいっ!!それでさぁ…」
「ちょっと美登里──」
あたしの苛立ちがピークに達しかけたその時、くん、と制服の袖を控え目に引かれた。
驚いて振り返ると、そこには綺麗に三つ編みを施した一年生の姿があった。
「先輩、あとどれくらい作ったらいいですか?」
「え…何のこと?」
「花びらです」
一年生が指差すその先に、向かい合わせに組まれた机と一心不乱に作業を進める他の一年生の姿があった。
机の上はたっぷりの花びらで、ピンクに彩られている。
「…こういうの作るのはまだ早いよ」
「あーっ、桃!あたしあたしっ!!」
「はぁ?」
あたしが怪訝な顔をすると、駆け寄ってきた奈々美はいたずらっ子のようにペロリと舌を出した。
「あたしが一年に頼んだのっ!フィナーレの花吹雪!!こういうのあった方が稽古でも雰囲気でるでしょ?」
ほら、と奈々美は一握り分の花びらをあたしの頭上に舞い上がらせる。
ヒラヒラとそれはなだらかな線を描き、数枚はあたしの頭に止まった。
「…あのさ、ちゃんとお芝居やる気ある?フィナーレって…まだ一幕もできてないんだよ?」
.