並ぶ二組の上靴が階段を踏みしめる度、キシッと小さくきしむ音がする。
葵はあたしの隣のクラスらしく、一緒に教室へ行こうと言ってくれた。
こっちに編入してきてわかったが、あたしはどうやら極端な人見知りらしい。話すことが何も思い浮かばなくて、どうしたらいいかわからない。
「クラスはどう?ちょっと慣れてきた?」
黙々と歩くことに集中していると、葵の方から質問が飛んできた。
「あ〜…うん。けど前いた学校とはだいぶかんじが違うから…」
「へえ、前の学校ってどんなんだったの?」
ヒヤリ、と一瞬背中が寒くなる。必死に言葉を探す舌先。
「…共学だった、女子高じゃ、なくて」
あまり、この話には触れられたくなかった。
葵がまた何か言おうとしたので、慌ててあたしから口を開く。
「い…いつから高跳び続けてるの?」
「え?…うーん…中等部の頃は短距離もしてたんだけどね。本格的なのは高等部からかも」
「えっ!?」
…それであんなに高く、綺麗に跳べるものなのか。
ぽかんと口を開けたままのあたしに、葵は屈託なく笑って走るのも飽きたしね、と言った。
彼女について騒ぎ立てる女子にはとても共感できなかったが、それでも納得してしまう魅力が葵にはあると思った。
葵はとてもサバサバしていて、心にストンと落ち着くような声は一緒に話していて心地よい。
足が長いためか、彼女のスカート丈はみんなより少し短いように見える。
「グラウンドで、騒がれてるの見たことあるの」
たくさんファンがいるんだね、あたしがそう言うと、
「…まぁ、女子高だからね」
葵は困ったように、おどけて口を尖らせた。
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