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一日は24時間で、それが変わることはなくて、それでも流れは単調だった。どこにいても単調で、でも独特で。あたしはその慣れない流れについて行くのに精一杯だった。



「そこのあなた、お待ちなさい」

この制服に腕を通すのももう何回目かだ。鏡に映る自分の姿はやっぱりまだ違和感があって好きになれないでいた。

耳朶をうつ、淡々とした落ち着きのある声。

登校時に通り過ぎた朝の校門。振り向くとそこには、キュッと口元を結んだ50代半ばに見える一人の女性が立っていた。

眼鏡の奥のきつい眼差しが、あたしの姿を捉える。

「学校へのご挨拶は、どうしました?」

「え……?」

「…ああ、三年二組の編入生ですね。教頭の高山です」

唇だけで笑みを作ると、彼女はあたしが二の句をつぐ間もないままに話を続けた。

「登校時のおはようございます、下校時のごきげんよう、は我が校の決まりですよ。創立以来、先輩方が受け継いできたのです。以後守ってください」

「え…ごきげんようって…学校に、ですか?」

呆然として、口が開いたままになる。それが気にくわなかったのか、教頭の眉間がピクリと動いた。

「…結城桃さん。本校があなたの入学を認めたのはなぜだとお思いですか?あなたの過去の音楽実績と、お姉様が優秀な卒業生であることを特別に考慮してのこと」

すうっと息を吸い込むと、教頭ははっきりとこう言った。


「ただし、あなたご自身がお気に召さないようでしたら、いつでもその制服をお脱ぎになって結構です」


呆気にとられたあたしを残したまま、彼女は足早にその場を去る。

その背筋は真っ直ぐにピンと伸びていて、彼女のプライドの高さがにじみ出ているようだった。


「ごきげんよう…?」


あたしにはなんて似合わない言葉なんだろう。
なんだかなにもかもが馬鹿らしく思えて、思わず笑ってしまいそうになる。


おはようございます、と校舎に向かって挨拶する生徒たちの群れをくぐり抜け、下駄箱へと向かう。

叩きつけるように床へと落とした上靴。その上に書かれた『結城』の文字が、挑むようにあたしを見ていた。

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