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置かれていた環境はガラリと変わった。
今まで積み上げてきたものは何の役にも立たない。言うならば、あたしは全く新しい人生のスタートラインに立たされたのだ。
武器は、この身ひとつだけだった。
「結城さんって東京から来たんでしょ〜?」
「ちょー都会じゃんっ!!ねね、東京ってどんなかんじなの?やっぱ人多い?」
取り囲まれたあたしに、質問の雨が吹き付ける。
檻に入れられた囚人にでもなった気分だ。
周りで騒ぐ彼女たちのスカートの裾は、みんな同じ丈だった。
「東京って言っても…あたしが住んでたとこ、田舎の方だし」
「えーっ、でも一人暮らしでしょ?」
「リッチだよね〜。結城さんお嬢ってかんじだもん」
「ま、ここは超名門お嬢さま学校ですけどぉ〜」
キャハハ、と黄色い笑い声が飛び交う。あたしは自分の顔がひきつっていないか心配しながら、口角を引き上げて笑みを浮かべた。
転校一日目だ。よほど編入生が珍しいのだろう。彼女たちの目は好奇の色で爛々と輝いている。
心の中でため息をつく自分がいた。彼女たちのテンションについていく自信はもうとおに消え失せていた。
まるでそのため息と同じタイミングで、後ろの席から呆れたようなため息が漏らされる。
振り返ると、パタリと読んでいた本を閉じて、赤星さんが出て行くのが見えた。
「…あーあ、委員長出てっちゃったよ〜」
「ちょーコワーイ!!結城さんも、気をつけた方がいいよぉ」
赤星さんは、やはりクラスでも少し浮いた存在のようだった。彼女の周りには、誰も好んで近寄ろうとしない。
ポツン、置いていかれた赤いハードカバーの本の表紙には、あたしの知らない題名が綴られていた。
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