頭上に続く空は、全てが溶けだしてしまいそうに青い。抱えているものを放り出してしまえたら、どんなに楽だろう。


…どんなに。


グラウンドの主役だった彼女のように、青空に身を全て…投げ出して。







家に帰ると、まだ誰も帰っていないのか中身は薄暗く、そこには濁った空気があった。

二階の自分の部屋に上がり、制服を脱ぎ捨てる。

そのまま倒れ込むと、ずいぶんと軽くなったはずのあたしの身体は、ベッドをぎしりと軋ませた。



部屋の隅のヴァイオリンケースは、あれから一度も開いていない。


皮でできたその黒い表面は、うっすらと白い埃を被っていた。














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