ピンと伸びた背中からかもしだされる雰囲気には、確かに学級委員の肩書きがピッタリだった。

赤星さんは教室を説明する以外にはただ黙々と前を歩くだけで、あたしは彼女が仏頂面しか持っていないんじゃないかと思ったほどだ。


「それで、図書室はここ」

目の前には赤茶色の大きな扉。

一度に教室の場所を全部言われてもわかるわけがないのだが、とりあえず何も言わずに頷いておく。

案内されたその図書室に入ると、古い紙の匂いが立ちこめていた。

下の段にびっしりと並んでいるのは、見たこともないような古い洋書。穏やかな空気。


この校舎も、雰囲気もなんだか苦手だったが、この図書室は少し好きかもしれない。


珍しげにぐるりと辺りを見渡していたが、その時ふと視界に入った外の景色に、目が釘付けになった。


「借りたいものがあるならカードを作らなきゃいけないんだけど。どうする?今作って──」

「ねぇ!…あ、えーっとアカホシ、さん」

「…どうしたの?」

「あれ、何?」


あたしが指差す先に、彼女も目を凝らす。

そこには随分と時代を違えてしまったような、白い建物があった。


ただのやけに古い建物。
それでもなぜか…身体の奥を探るような、何か惹きつけられるものがあったのだ。


「…ああ、旧校舎。もうすぐ取り壊すけど」

「え、そうなの?もったいなーい!」


行ってみたい─浮かんだ気持ちを口に出す間もなく、赤星さんはあたしの考えを読んだかのように言い放った。


「生徒は立ち入り禁止よ」

「えっ、なんで?」

「…そういう決まりなの」


心底面倒臭そうにそう言うと、彼女はまた早足で立ち去っていく。

膝元で揺れるプリーツスカート。


あたしも小さくため息をつくと、見失わないように足を速めた。


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