「舐めろ」
いきなりそう言われ、少し躊躇する。
勿論わざとなのだが、今日のこいつはそんな事にも気付かないほど嫉妬と焦りで頭の中を侵されている。
「…oui」
しばらくのろりそろりとチャックを下ろしたりなんだりしていると、まどろっこしいとでも言わんばかりにそのそそり立った欲望でいきなり喉奥まで突いてくる。
「んグッ……!」
苦しい。苦しい。苦しい。
青臭くてえぐい味が口中に広がる。
馴れたいつもの味だが、この状況下ではいつもよりも強烈に思える。
えづきそうになりながらも、俺は必死に奉仕した。
「…ン、グっ…う」
熱い塊が口内で脈打ち、更に成長を始める。
上顎を何度も擦られる感覚が快楽に変わるまでに、そう時間はかからなかった。
「ん、ンッ……は…っア」
ごり、ごり、と喉奥を抉られるたび、鋭い快感が背筋を走る。
顎につたう唾液さえもよりいっそうそれを助長し、抗えない重い快楽をもたらす。
「ア、あァ…ふ、んン」
「くっ…」
堪らなげな声音に思わず顔をあげると、満足気な表情で蕩けきった俺の顔を眺めている腐れ縁がいた。
欲情の色が混ざった瞳で見つめられると、びりびりと痺れるような感覚が脳を侵してゆく。
「ン、ふァ…!」
不意にぐり、と股間を足で弄ばれる。
「舐めてるだけで、勃たせてんじゃねえよ」
「…ァ、ふ…あアッ……!」
「…いやらしい奴」
ぞくり、と全身が総毛立つような、婬猥に掠れた声が鼓膜を震わせる。
それだけで、イってしまいそうだ。
「あ、んンッ…ふ、うぅ…!」
「随分、イイ反応するじゃねえか」
「ひっ…!アぁ、あ、あはァ……ッ」
「…ッは、たまんねえな」
にやりと口の端を歪めて、足先で強引に俺の欲望をにゅる、にゅると擦る。
やはり手でされるのには及ばないもどかしい刺激と、足蹴にされているという屈辱がない交ぜになった快感が、もっと強い刺激を求めてかくかくと腰を揺らしてしまう。
それに合わせるかのようになおも口腔を犯す熱いモノから次々と溢れてくる液を、一滴も溢さぬ様に舌で絡めてすくいとり、もっと欲しいとねだる様にそれに吸い付く。
早く、早く頂戴。
この渇きを、潤して。
そう懇願するかの様に、根本まで呑み込み牙を突き立てる。
「っく…すげえ、イイ……ッ」
「ぅ、ン……!っふ、んンッ…!」
「……くそ、限界っ、だ…!出、るっ……!」
熱情を押し殺した唸りと共に、熱い奔流がせきを切った様に放出され、流れ込んでくる。
「ン、んんッ…ンぐ、ごくっ……」
口外へ溢れぬ様に吸い取って、まだ精菅に残るものさえも搾り取る様にごくり、ごくりと喉を鳴らす。
喉を伝う、焼けつくように熱い液と、蒸れた雄の匂い。
限界が来ていたのは俺も同じで、アーサーの熱さを全身で感じながら、いつしか俺は果てていた。
「ア……っは、ァ…あ」
「…フェラだけで、イったのかよ……そんなに美味かったのか?コレ」
「……うん、アーサーの、美味しかったよ…ねえ、次はこっちに食べさせて」
ちらり、と紅い舌を覗かせ、ひくつくソコからくちゅくちゅと卑猥な音をさせて誘えば、すぐに食らいついてくる。
「…ああ。どうぞ召し上がれ、食いしん坊のフランシス」
「ふふ……満足するまで、食べさせてね?」
上に覆い被さってくるその背に手を回し、耳元で囁く。

「夜はまだまだ、長いんだから……」


end.