「どこにいたって誰といたって、俺の目にはキミしか映らない。それくらい心音ちゃんが大事なんだ」



「先輩…」



だけど分かってる。


決めるのは心音ちゃんだ。


俺の気持ちを押し付ける訳にはいかない。



「もちろん、俺を選んでほしいよ。だけど同情だけはしないで。辛い思いをしてるのは俺だけじゃない。奏夢や優空や翔斗だって皆、悩みに悩んだ過去がある」



何も俺だけが特別なんじゃない。


だからこそ心音ちゃんらしく。



「心音ちゃんが心からそばにいたいと思う人を選んでほしい。俺は…心音ちゃんが幸せであればそれでいいから」



後悔のない選択をしてほしい。


俺は…最後までかっこつけだな。



「…ごめんなさい、答えはまだ出せません。だけど先輩なら大丈夫です。あたしが感じた先輩の優しさは嘘なんかじゃないです。自信を持ってください」



やっぱり、心音ちゃんには敵わない。



「先輩ならきっと、全てを受け入れられますよ。頭が混乱しているだけです。だって歩結先輩はもう答えを見つけてるじゃないですか。自分が大切だと思う人を大切にしてください。海外にいるお父さんも歩結先輩のことを想ってると思いますよ」



どうしてキミといるだけで、こんなに心が落ち着くんだろう。


キミといるとずっと考えてた悩みがちっぽけに見える。



「辛いことがあればいつだって話を聞きます。歩結先輩が頭を整理できるようにあたしもできる限りの事はします。だからもう、苦しまないでください。先輩が苦しんでると、あたしも苦しいから…」



俺には大事な両親がいる。


それだけを大事にしていこう。




「……心音ちゃんとここに来れてよかった」








─────大好きだよ。




























俺たちはしばらくこの場所を離れず、ただただそこに立ち止まっていた。