文化祭の日には、皆が自分の想いを確信した。


いや、俺が確信させたんだ。


ずるく生きるのは嫌だから。


大事な仲間だからこそ、正々堂々と向き合いたかったから。


それから………



「…いた。心音ちゃん!」



皆と向き合った上で、俺を選んで欲しかったから。



「あゆむ、せんぱい…!」



見つけた彼女に駆け寄ると、泣いていると思っていた心音ちゃんの目には涙一つ浮かんでいなかった。



「よかった。大丈夫?」



「はい。何とか…」



成長したんだな、心音ちゃんも。











心音ちゃんに恋をしてから、俺自身も気づいたことがある。


例えば…



「それなら良かった。てっきり泣いてるかと…」



自分が思ったより、嫉妬深かったんだってこと。


心音ちゃんが優空や湊叶と2人でいるって聞いただけでいつも落ち着かない気持ちになる。


そんな気持ちをごまかそうと参考書を開いてそれっぽく見せるけど…。



「もう、泣きませんよ!」



実はほとんど頭になんて入ってない。



「そっか。ごめんごめん」



後は……



「いいですよ。…歩結だから許す」



恋をすればするほどその子しか見えなくなるってこと。


今までに恋をしてこなかったわけじゃない。


それでもここまで本気になったことは…なかった。


自分で言うのも変だけど、俺は俺自身分け隔てなく色んな人に平等に接することが出来るって自慢に思ってた。


どんな人にでも、平等に。



「ありがとう。心音」