「ただ…知っておいてほしかったんだ。俺たちの気持ちを」
そんなあたしに応えるようにそう言う桐沢くんと成田先輩。
「……皆さんは、それでいいんですか?」
「いいも悪いもないよ。もし仮に、俺らが今心音ちゃんに応えを求めたらどうする?」
「それは……」
翔斗先輩の問いに、あたしは答えることが出来なかった。
「だからこれでいい。俺たちは、柊を困らせたいわけじゃねーから」
「…けどさ、1つだけ“お願い”聞いてくんない?」
「………お願い?」
「うん。そろそろその敬語とかしこまった呼び方、やめねぇかなって。俺の呼び名は今のままでもいいんだけど」
「分かりました」
むしろ、こんな小さなお願いだけでいいのかな?
それがあたしの正直な意見だった。
あたしはこれまで、皆にはたくさんよくしてもらった。
今だって…あたしの事を一番に考えて、応えを求めようとしなかった。
あたしは………どうすれば皆に恩を返せる?
何をすればいい?
その時、あたしの頭にはある一つの考えが浮かんだ。
「…それじゃ、解散しようか?」
成田先輩改め…歩結先輩の声で皆はバラバラと立ち上がり、自分の部屋へと戻っていく。
「じゃーな、心音」
「…うん」
最後に奏夢くんが出ていくのを見届けたあたしは、後ろにいるであろう優空くんを振り返った。