お父さんはそう考えた。
もちろん、胸が痛まなかったわけじゃない。
それでもあたしたちにとって1番最良の方法は
“家を出ること”
それしかなかったって…。
バカだよ…お父さんはバカだ……。
話を聞けば、あたしたちが“他に女の人が出来た”と勘違いしたのは単純なことで。
普段なら休日は家族と過ごすことが当たり前のお父さんが、あたしたちを放って外出する回数が増えたから。
だからあたしたちは、あたしたちより大事な人ができたんだって勝手に決めつけた。
お父さんはただ…病院に通ってただけだったのに。
「いいんだ。隠したのは俺なんだから…お前たちは何も気にすることなんてない」
「よくないよ…っ。ごめん、ごめんね…、お父さんっ……!」
胸を痛めながらもあたしたちの為に自ら身を引いたお父さん。
年を経て久しぶりに会った娘に拒絶されたお父さんの気持ちを思うとやるせなくて、あたしは精一杯の謝罪をした。
「心音…お前は謝らなくていいんだ。今まで辛い思いをさせて悪かった」
もう、謝らないでよ…。
あなたは何も
──────謝ることなんてないんだよ…。
☆*☆*☆*☆*☆
1人。
寮への帰り道。
お母さんは泣き疲れたのか話し合いのあとすぐ眠りにつき、そのタイミングであたしも家をあとにした。
家を出る時お父さんに『送る』って言われたけど…。
『今は1人になりたい』
そう言って断った。