「…いいのか?」
「今更何を言ってるの?今日は誠二朗(セイジロウ)さん、帰ってこられないみたいだから。…それに、あなたをここまで連れてきたのは心音なんでしょう?この子が…なんの考えもなしにあなたを連れてくるはずがないもの」
お母さん…。
「すまない…」
「心音。裕汰を呼んできてくれる?」
「…うん。分かった」
☆*☆*☆*☆*☆
裕くんを呼び、4人で食卓を囲んで座る。
だけど…空気はすごく重苦しかった。
その空気に胸が張り裂けそうで、逃げ出したくもなった。
それでも────────
「…久しぶり、だな。って言っても裕汰は覚えてないか。まだ小さかったもんな…」
「……覚えてるよ。俺の“父さん”、だろ?」
今からお父さんが話そうとしているのはきっと大事なことで、目をそらし続けちゃいけないことだと思うから。
どれだけ辛くても逃げ出しちゃいけない。
──────向き合わなくちゃいけない。
「心音たちから、聞いてるか…。お前達には本当にひどいことをした。謝って許されることじゃないのは分かってる。それでも…本当にすまなかった!この通り……っ」
お父さんはテーブルと額がくっつくギリギリのところまで、深く頭を下げた。
「あなた…もういいわ。頭をあげて」
お母さんの声にしぶしぶ頭をあげたお父さんは話を始めた。
「離婚届をおいて出ていったあの日から今日まで。お前たちを忘れた日なんて一度もなかった。忘れられるはずがなかった」
「そんなの、綺麗事だよ」
気づけばあたしはそう口を開いていた。