「だって、そんなの辛すぎるから…。奏夢くんはずっとずっと頑張ってたんだね…」



心音のこーゆー所が俺が…ほかの奴らが惚れ込んだ理由なんだろーな。


けど、優空たちにこいつは絶対渡さねぇ!



「話はここからだ」



母さんがいなくなってから俺は友達に何を言われても父さんが夜に泣いてるのを見ても



大丈夫。
俺は母さんがいなくたって生きていける。



そう思って誰の前でも平気なフリをしてきた。


いつだって明るい子を演じてきた。



「まぁ本当は悲しかったんだって自覚したのは実はすげぇ最近だったりするんだけどよ」



俺が女をくだらねぇと思い始めたのはその後。


母さんがいなくなってから上辺だけでしか、金持ちだってことしか見てねぇ女が何人も俺や父さんに声をかけてくるようになった。


ガキだった俺はその女たちにまんまと騙され続けた。


父さんの秘書を名乗ってきたり、知人のフリをしてきたり。



ガキながらに学習した俺は女なんて皆見ためだけに囚われるクズばかりなんだと思い込むようになって。


奢ってやればいいんだろって。


金だけ渡しときゃいいんだろって。


そんなふうに思うようになった。



「最初はお前にだってそうするつもりだった。覚えてんだろ、あの日のこと」



文化祭の日、一緒にまわったこいつに対しても同じようにするつもりで奢ってやるって言ったのに。


こいつは今までの女とは違う反応を示した。


俺がずっと望んでた、諦めかけていた俺自身を見てくれる女を見つけたんだ。



「…覚えてるよ」



「お前だけはさ、違ったんだよ」