それでも母さんは尊敬出来るに値する人だった。


大好きで、自慢だった。


それは俺だけじゃなくてきっと父さんも。


それなのに………



「……突然の事故だった」



その日はいつもは家にいない父さんの久々の休暇日で。


母さんは父さんに俺を任せて隣町の少しでけぇスーパーに買い物に出かけた。


俺は久しぶりに父さんと遊べるのが嬉しくて、笑顔で母さんを見送った。














────まさかそれが母さんを見る最後になるなんて知らずに。














───『はいもしもし。朝霧ですが…』




急に鳴り響いた1本の電話に父さんは言葉を失った。


その電話は警察からで、既に母さんは息をひきとった後だったという。


幼かった俺は言われるままに父さんについていき…


たどり着いた病院で目を閉じたままの母さんの姿を見た。



────『おかあさん…?ねてるの……?』



訳の分からない俺に父さんから告げられたのは信じ難い現実だった。


朝はあんなに元気だったのに。


笑顔でいってくるねって言ってたのに。


もう逢えねぇなんて。


俺は何度も呼びかけた。


母さん起きてよって何度も、何度も。



「だけどそんな俺の声は、母さんには届かなかった」



「奏夢くん…」



そう呟いた心音の方を見ると顔を歪めて今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。



「ったくバカ心音!何でおめぇがそんな顔してんだよっ」