「俺の家族のこと、話したことあんだっけ」
ふいに俺は言葉をこぼした。
──────────俺自身のこと
「…ううん。お家が朝霧コーポレーションでお父さんがそこの社長だってことくらいしか…」
「今からすっげー貴重な話をしてやる。だから聞いとけっ」
今まで誰かに話したことなんてなかった。
つか、話そうと思ったこともねぇ。
人間っつーのは結局自分が1番で、それが当たりめぇだと思ってたから。
けど………
「うん。わかった」
こいつだけは違う。
こいつは自分が1番大事だなんてそんなこと思っちゃいねぇ。
どんな時だって人のことを考えてる。
こんな小せぇ身体で、頭で。
そんな心音にだから話しておきてぇと思ったんだ。
俺の全てを知ってほしいなんて柄にもねぇことを思っちまったんだ。
「俺の母親、実は小2の頃に死んでんだ」
自分から進んで話したことのない、
俺の家族の話────────────
「俺んちは社長の家っつーこともあって昔から裕福だった」
正直、欲しいものは何でも与えられてきたから不満なんてひとつもなかったしかなり自由に育ててきてもらったと思う。
だけど人としての品格だけは崩しちゃならねぇっつー両親の考えもあってそこだけはしっかり教育されてきた。
出張で忙しい父さんに代わって母さんは俺を厳しく、時には甘やかしてくれてた。
「…………と、思う」
小さすぎた俺の記憶は曖昧で、はっきりとは言いきれねぇけど。